健康経営優良法人認定制度

健康経営優良法人認定制度

  • 健康経営優良法人

健康経営に注目する企業が増えた背景には、人手不足による過重労働が原因で肉体的・精神的なダメージを負う従業員が増えたことや、コロナ禍における働き方の変化により、運動不足やコミュニケーション不足によるメンタルヘルスの不調などが問題視されていることにあります。こうした企業を後押しするのが、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」です。
健康経営に積極的に取り組んでいる企業として、企業価値の向上にもつながる健康経営優良法人認定制度について、認定されるメリットや認定基準などを詳しく解説します。

1. 健康経営優良法人認定制度とは

そもそも健康経営とは、従業員の健康管理や健康増進を経営的な課題として捉え、経営戦略のひとつとして投資を実行することです。
現在、長時間労働やパワハラなどによる過労死や自殺、顕在化していないメンタル不調の増加などが大きな社会問題となっています。従業員が健康に働けるよう、企業側が先行投資することで、企業の生産性を向上させる方法として推進されるようになりました。

健康経営優良法人認定制度は、健康経営に積極的に取り組んでいる企業を可視化してその企業価値を向上させ、社会全体の健康経営に対する機運を高めることを目的として経済産業省が設計。2016年に創設され、2017年からスタートしています。

本制度は、日本健康会議(民間組織が連携して行政の全面的な支援のもとで組織された団体)が運営し、「優良な健康経営を実践している企業である」と評価した法人を、毎年「健康経営優良法人」として認定しています。

大企業と中小企業の健康経営優良法人

健康経営優良法人認定制度には、従業員数が大規模な企業などを対象とした「大規模法人部門」と、中小規模な企業などを対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門があります。その中から、健康経営に取り組んで、認定を受けた法人が健康経営優良法人として公表されます。

2. 健康経営優良法人の認定を受けるメリット

企業が健康経営優良法人の認定を受けることには、さまざまなメリットがあります。ここでは、いくつかの具体例を挙げてみましょう。

2-1. 企業のイメージがアップする

健康経営に取り組んでいることがわかると、「社員の健康を大切にするホワイト企業」としてクリーンなイメージが定着し、ブランド価値が向上します。新規・既存を問わず、顧客からの信頼を得やすくなり、業績アップも見込めるでしょう。

2-2. 採用が有利になる

ブランド価値が向上することによる影響は、顧客だけでなく採用にも及びます。ワークライフバランスが重視される今、就職先・転職先となる企業に「働き方への配慮」を求める人は少なくありません。
健康経営優良法人の認定は、従業員の健康管理に高い関心をもっていることの証明であり、応募者にとっては大きな安心材料になるでしょう。健康経営の実践は、求職者への強力なアピール材料にもなりうるのです。

2-3. 生産性が向上する

率先して健康経営を実践する企業では、従業員が自社に対して誇りを持ち、やりがいを感じながらいきいきと働くようになります。結果として、ポジティブな気持ちで主体的に仕事をするようになりますので、生産性の向上が期待できるでしょう。従業員のエンゲージメントが高まり、健康問題をきっかけとした休職や退職が減少します。

2-4. 株価が上昇する

従業員が活力ある働き方をし、生産性の向上によって業績が上がると、投資家の関心も高まります。将来的には、株価の上昇も見込めます。

3. 健康経営優良法人2023の認定基準

健康経営優良法人認定制度には、大規模法人部門と中小規模法人部門の2部門があります。2021年度に行われた健康経営優良法人2023の認定基準について、各部門の共通要件と違いについて解説します。

3-1. 大規模法人部門と中小規模法人部門の認定基準の共通要件

まずは、大規模法人部門と中小規模法人部門に共通して、下記の5つの認定要件が設定されていました。

<健康経営優良法人認定要件>

  1. 経営理念:健康宣言の社内外への発信
  2. 組織体制:健康づくりを推進する責任者や担当者を設置
  3. 制度・施策実行:健康経営のための制度や仕組みを作り、実行している
  4. 評価・改善:制度や仕組みを評価・改善・交換検証などを実施している
  5. 法令遵守・リスクマネジメント:労働基準法や労働安全衛生法といった、従業員の健康管理に関わる法令に違反していない

3-2. 大規模法人部門と中小規模法人部門の認定基準の違い

大規模法人部門と中小規模法人部門の、認定基準の違いについて解説します。
なお、企業が健康企業宣言を行うには、経営者自身が年に1度の定期健康診断を受診している必要があります。また、社内外に宣言内容を文書などで発信する必要もあります。

健康経営優良法人2023(大規模法人部門)認定要件

※引用:経済産業省「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)認定要件」

大規模法人部門では、「1. 経営理念」の評価項目が「健康宣言の社内外への発信(マニュアルレポートや統合報告書等での発信) 」と「(1)トップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいること」に分かれ、「健康宣言の社内外への発信(アニュアルレポートや統合報告書等での発信) 」は必須です。
なお、「(1)トップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいること」と「3. 制度・施策実行」の評価項目の中に(2)から(16)までナンバリングされている評価項目があります。大規模法人部門で健康経営優良法人として認定を受けるには、これら16項目のうちの、13項目以上を満たす必要があるのです。

健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)認定要件

※引用:経済産業省「健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)認定要件」

中小規模法人部門は、細かな点で大規模法人部門との違いがあります。
例えば、「1. 経営理念」の評価項目は、「健康宣言の社内外への発信及び経営者自身の健診受診」のみです。認定要件に必要な項目数にも違いがあり、「3. 制度・施策実行」の中項目のひとつである「健康経営の実践に向けた土台づくり」では、4項目あるうちの1項目以上を満たせば良いとされています。

4. ホワイト500とブライト500とは

「ホワイト500」は、大規模法人部門のうち、調査結果の内容が特に優良だった上位500の認定法人のみに付加される冠のことです。なお、中小規模法人部門において、特に優良と評価された上位500法人は「ブライト500」と冠されます。

ホワイト500に認定されるには、前述した認定要件のうち、「1. 経営理念」における「トップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいること 」が必須項目となるほか、「3. 制度・施策実行」の必要項目数も増加します。ブライト500も同様に「3. 制度・施策実行」の必要項目数が増加するため、企業にはさらなる努力が求められるのです。

5. 健康経営優良法人認定までのプロセス

健康経営優良法人の申請から認定までのプロセスは、部門ごとに異なります。大規模法人部門と中小規模法人部門の各認定フローは下記のとおりです。

健康経営優良法人の認定フロー

5-1. 大規模法人部門の場合

経済産業省が実施する「従業員の健康に関する取り組みについての調査(健康経営度調査)」に回答し、健康経営優良法人認定事務局へ申請。認定審査を経て、日本健康会議で認定が決定します。

5-2. 中小規模法人部門の場合

全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合連合会、国保組合など、加入している保険者が実施する健康宣言事業に参加します。保険者が事業を行っていない場合、各自治体の健康宣言事業でも代替可能です。
また、加入している保険者、および所属する自治体がともに健康宣言事業を行っていない場合には、自社として独自の健康経営宣言を行うことで条件をクリアできます。

大規模法人部門、中小規模法人部門ともに、自社の取り組み状況のうち、認定基準に該当する取り組みの内容を申請書に記載して、健康経営優良法人認定事務局へ申請。認定審査を経て、日本健康会議において認定が決定します。

SNSシェア

よく読まれてる記事

記事一覧はこちら

アプリを
ダウンロード