メンタルヘルスケアと健康経営

メンタルヘルスケアと健康経営

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近年、産業構造の変化や新型コロナウイルス感染症の影響によって、働く人のメンタルヘルスに関心が集まっています。メンタルヘルスの不調は、心だけでなく体にも影響を及ぼすといわれており、健康経営を推進する上で従業員のメンタルヘルスケアは欠かせません。
ここでは、従業員のメンタルヘルスに不調が起こる原因について紹介します。また、外部サービスの利用を含めた具体的な方法や、主なメンタルヘルスケアサービスについても解説します。

1. メンタルヘルスの不調が起こる理由

メンタルヘルスとは「精神の健康」「心の健康」のことであり、厚生労働省はメンタルヘルスの不調を下記のように定義しています。

<メンタルヘルスの不調>
「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」
※引用:厚生労働省「メンタルヘルス不調:用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

メンタルヘルスの不調は、プレッシャーに弱い人にだけ起こるわけではありません。誰でも、どこにいても、いつの間にか陥る可能性があるのです。
メンタルヘルス不調の原因は、「内因性」と「外因性」に分けられます。

1-1. 内因性によるメンタルヘルスの不調

内因性とは、本人の内側、心にある不安、おそれ、無力感といった感情が原因になることを指します。何らかの体験にもとづく根深い自己否定や、漠然とした感覚であることが多く、解消には時間がかかります。
内因性は私的要因とも呼ばれ、よくある例は、家族関係のこじれや金銭トラブルです。私的要因に事業者は関わることが難しいため、本人自身で対処が難しい場合は、友人や家族など親しい人や、医師やカウンセラーなどの専門家に相談する必要があります。

1-2. 外因性によるメンタルヘルスの不調

外因性とは、ハードな業務や人間関係のもつれ、異動や引越しに伴う環境変化といった、本人が意図しない外的要因のことです。外因性のメンタルヘルスの不調の場合は、原因を特定して改善を図ることで解消が期待できます。
外因性の場合は職場要因が大きく影響しています。仕事量や仕事内容、職場の人間関係など、他者からの影響が強いため自分ではコントロールしにくく、問題が大きくなる傾向があります。上司や産業医への早めの相談が望ましいでしょう。

2. メンタルヘルスケアとは

メンタルヘルスケアは、従業員が抱えるメンタルヘルスの課題に対して、企業が適切なケアとサポートを行うことです。
メンタルヘルスの不調を放置すると、従業員のモチベーション低下や、職場内でのトラブル発生、休職や離職の増加を招きます。従業員のメンタルヘルス不調の原因が職場要因にあることが判明すれば、社外からのイメージが大きく損なわれることにもなりかねません。

従業員のメンタルヘルスの不調を放置し続けると、やがて経営にもダメージが及ぶでしょう。今や、企業が取り組む従業員のメンタルヘルスケアは、経営のリスクヘッジであるともいえるのです。

3. 企業で行うメンタルヘルスケア

それでは、企業が行うメンタルヘルスケアについて、具体的に見ていきましょう。
厚生労働省は、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の4つを推奨しています。

3-1. セルフケア

セルフケアとは、不調を感じたり、ストレスチェックの結果が悪かったりした従業員自身が、自分のために行うメンタルヘルスケアです。不調に気づいたときに迅速に対処できるよう、企業は普段から情報提供や研修を実施します。

3-2. ラインによるケア

ラインによるとは、上司と部下といった職場上の上下関係のことです。ラインによるケアによって、現場の管理監督者である上司が部下の状態に目を配り、環境の改善や異変の早期発見・対処などを担います。

3-3. 事業場内産業保健スタッフ等によるケア

職場にいる産業医や保健師といった、企業内の専門家によるメンタルヘルスケアを、事業場内産業保健スタッフ等によるケアといいます。専門家から人事部門へ情報を共有し、ラインによるケアにつなげる場合もあります。

3-4. 事業場外資源によるケア

事業場外資源によるケアは、職場以外の、メンタルヘルスケアを専門とする外部機関に委託する場合のことです。事業場外資源にケアを委託しつつ、事業場内産業保健スタッフと連携することで、メンタルヘルスケアの効果を高めることができます。

メンタルヘルスケアの具体的な進め方
4つのケアが適切に実施されるよう、企業の関係者が相互に連携して、以下のような取り組みを積極的に行うことが効果的といわれています。
職場における心の健康づくり

※参考:厚生労働省「職場における心の健康づくり

4. メンタルヘルスケアサービス

健康経営の一環として従業員のメンタルヘルスケアを行う際には、福利厚生にメンタルヘルスケアサービスを導入するのも有効です。従業員のモチベーションを定期的に確認し、メンタルヘルスの不調を事前に察知できることを前提として、下記に挙げるようなサービスをうまく活用しましょう。

4-1. ストレスチェック

ストレスチェックとは、ストレスに関する質問に労働者が答え、それを集計・分析することで労働者のストレスの状態を調べるものです。

4-2. カウンセラー派遣

カウンセラーを派遣し、ストレス度が高い社員との面談カウンセリングを行います。
メンタルの不調を感じている従業員が、産業医よりさらに気楽に相談できるよう、オンラインでカウンセラーと対話できるサービスもあります。

4-3. メンタルヘルスケアに関する研修を実施

メンタルヘルスケアに関する研修には、主にセルフケア研修、ストレスマネジメント研修、レジリエンス研修といったものがあります。各研修の内容は下記のとおりです。

<メンタルヘルスケアに関する主な研修>

  • セルフケア研修・・・従業員が自分でストレスに気づき、セルフケアできるようにする
  • ストレスマネジメント研修・・・ストレスとの付き合い方を学ぶ
  • レジリエンス研修・・・トラブルは成長に必要なものとして前向きに捉え、逆境に立ち向かうメンタルを身につける

4-4. 課題に対するコンサルティング

健康経営に取り組もうとする企業に対して現状をヒアリングし、健康課題を整理するコンサルティングを行います。健康経営に取り組んでいるものの、思うような効果が出ない企業に対して、目的と方向性を整理するコンサルティングを行うこともあります。

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