健康経営のメリット

健康経営のメリット

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健康経営とは、従業員のフィジカルやメンタルヘルスの管理を経営課題のひとつとして捉え、中長期的にその維持・向上に取り組むことにより、企業の生産性を向上させるというものです。元々はアメリカで生まれた概念ですが、ビジネスを取り巻く環境の変化を受け、近年は日本でも注目されるようになっています。

労働人口が減り、人材の確保が難しくなる一方で、長時間労働の是正と多様性の確保を目指す働き方改革が進む時代において、今いる従業員に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうための健康経営は、重要性を増しています。CSR(企業の社会的責任)の一部となる、従業員の権利を尊重するという観点から見ても、積極的な導入が求められるでしょう。

ここでは、健康経営が企業の経営にどのようなメリットをもたらすのかを、デメリットや健康経営優良法人認定制度などの健康経営関連制度と併せて、詳しく解説します。

1. 健康経営のメリット

まずは、健康経営を推進することにより、企業が得られるメリットについて見ていきましょう。従業員の健康が向上することで、最終的に企業経営にも好影響がもたらされます。

健康経営のメリット

1-1. 労働生産性向上

体調に不安があったり、精神的に不安定だったりすると、従業員は仕事に集中することができません。また、健康を損なった従業員の代わりに、ほかの従業員の業務量が増大することも考えられます。
一方、健康経営により心身の健康が保たれていれば、従業員は高いモチベーションで、いきいきと仕事に取り組むことができます。

心身共に好調な従業員が増えるにつれて、早退や欠勤、休職が減り、従業員一人ひとりが十分なパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。それが、結果的に会社全体の労働生産性向上につながるのです。

1-2. 企業の医療費負担軽減

企業にとって、医療費は見えない人件費となり、経営を圧迫すらしかねないものです。心身の不調で医療サービスを受ける従業員が増えると、当然、企業が負担する医療費は増加します。
高齢化が進む今後の日本では、後期高齢者医療制度の企業負担が増えることも考えられます。今のうちに、健康経営により従業員たちの健康管理に先行投資し、企業の医療費負担軽減を進めておくべきでしょう。

1-3. 従業員の定着率アップ

従業員は、働く人のことを大切に考え、労働環境を積極的に整備してくれる会社でこそ、長く働きたいと思うものです。例えば、売上第一主義で長時間労働が常態化している企業と、従業員が健全に働くための環境や制度を整備しながら売上を伸ばしている企業とでは、どちらが従業員に支持されるかは、いうまでもありません。健康経営を導入することは、従業員の定着率アップにもつながるのです。

1-4. 企業イメージ向上

2013年の日本再興戦略を皮切りに、政府は従業員の健康管理に取り組む企業や自治体の好事例を表彰したり、優良企業として認定する制度を導入したりして、健康経営を推進してきました。こうした積み重ねもあり、積極的に健康経営に取り組む企業は、「ホワイト企業」であるという認識が広がりつつあります。
企業が健康経営に乗り出し、消費者、株主、投資家などのあいだで企業イメージが向上すると、最終的には売上や取引の拡大、株価の上昇などにつながると考えられます。

1-5. 採用力アップ

健康経営に取り組み、企業イメージが向上することで、就活生や転職活動中の人材に注目されやすくなり、採用力アップの効果も期待できます。健康経営への取り組みは、企業が中長期的な戦略にもとづいて経営を進めている証でもあり、将来性のある会社や長く働ける会社を探している人材に、好印象を抱いてもらいやすくなるでしょう。
また、最近では「ワークライフバランスがとれる」ことを、就職先選びのポイントに挙げる人も増えています。働きやすい環境を求める優秀な人材に、健康経営をキーワードにアプローチすることも可能です。

2. 健康経営のデメリット

健康経営には多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。企業側のデメリットと従業員側のデメリットが存在し、それぞれを認識した上で健康経営に取り組む必要があるのです。

2-1. 企業から見たデメリット

健康経営を推進する上で、企業から見たデメリットとしては下記の2つがあります。経営層や担当者は、こうしたデメリットがあること、そして健康経営によりデメリット以上の効果が期待できることを、社内に周知していく必要があるでしょう。

コストがかかる
健康経営は、経営トップの指揮のもと、全社一丸となって取り組まないとうまくいきません。企業規模によっては、健康経営に特化した部署やプロジェクトチームを作り、重要性や目的を社内に浸透させていく必要があるでしょう。中小規模の企業でも、最低限、専任や兼任の担当者を用意する必要があります。
それに加え、従業員の個人情報である健康データを収集・管理するための設備投資や、その管理を任せる人材を確保しなければならない場合も出てきます。健康経営を担当する人材の採用や教育も必要となりますし、環境整備にもコストがかかるのです。
効果が把握しにくい
健康経営は売上などとは違い、取り組みの効果を把握しにくい点も把握しておく必要があります。例えば、従業員の定着率がアップしたとして、それが健康経営によるものだと証明するのは容易ではありません。
また、健康経営の成果は、中長期的に得られるものでもあります。成果を急がずに、長期的にデータを蓄積していく必要があるということを、社内の共通認識としておく必要もあるでしょう。

2-2. 従業員から見たデメリット

従業員から見ると、健康経営は健康向上というメリットだけでなく、時に下記のようなデメリットを感じることがあります。経営層や担当者は、従業員に対してデメリットを丁寧にケアしながら、健康経営を推進していくことが重要です。

個人情報を会社に知られる
メンタル・フィジカル共に、個人の健康問題はとてもセンシティブな情報です。会社が従業員を守るためといっても、そうした個人情報を会社に知られることに抵抗感を感じる従業員は少なくありません。誰が情報を見るのか、また情報はきちんと管理されるのかも、気になる点でしょう。
そうした従業員の不安を解消するために、データ取得の目的や管理方法について経営層や担当者が丁寧に説明し、理解を得る必要があります。それも、健康経営を進める上での重要なポイントです。
業務以外にするべきことが増える
健康経営を進める上で、従業員は、データ取得のためのストレスチェックや健康診断を受診することを求められます。また、企業が企画する体力チェックやウォーキングといった健康イベントへの参加を求められることもあるでしょう。
日々忙しくしている従業員にとっては、そうした業務以外にするべきことが増えること自体が、ストレスになりかねません。それゆえに、心身に異常が出る前に健康状態のチェックをしておくことの大切さを、周知しておく必要があるのです。

3. 健康経営優良法人認定制度などの健康経営関連制度

最後に、健康経営関連の制度などをご紹介します。こうした制度を利用、もしくは認定を受けることで、健康経営による企業のイメージアップの後押しが期待できます。

健康経営関連制度

3-1. 健康経営優良法人認定制度

健康経営優良法人認定制度とは、健康経営分野において、特に優良な取り組みを行っている大企業や中小企業を顕彰する制度です。健康経営優良法人に認定されると、ロゴマークの使用が可能になり、「従業員の健康管理に経営の視点から取り組んでいる企業」として、社会的な評価を得ることができます。自治体や金融機関からインセンティブが得られるというメリットもあります。

3-2. 健康企業宣言

前述した健康経営優良法人の認定を受けるための必須要件として、経営者を筆頭に、企業全体で従業員の健康づくりに取り組むことを宣言する必要があります。それが、健康企業宣言です。
なお、企業が健康企業宣言を行うには、経営者自身が年に1度の定期健康診断を受診している必要があります。また、社内外に宣言内容を文書などで発信する必要もあります。

3-3. 健康経営銘柄

健康経営銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業のうち、健康経営に対して優れた取り組みをしている企業を選定するものです。企業経営を取り巻く状況の不確実性が増す時代に、この健康経営銘柄に選定されることで、「持続的な企業価値の創造に取り組んでいる企業」として、株主や投資家といったステークホルダーからの評価が高まる効果が期待できます。

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